東京合気道シニア稽古日誌 2004

最終更新日 2009年12月15日

2004年

4月×日 初日

石川先生とは今日が初対面。精悍そのもの。一ヶ月ほど前に訪ねた古武道の道場主と同じイメージ。

挨拶が済むと早速稽古が始まる。私の服装はTシャツにトレパンで、最初は受け身から。後方受け身、前方受け身があり、立て膝からの前方回転受け身は、回転運動など何十年もやっていなので、二〜三回連続回転するとフラフラ目眩がする。その他「しっこう膝行」などいくつか稽古したが、あとは覚えていない。

4月×日 第2日

「膝行−座った状態で膝で進む。」と「上げ手−前に出した手を相手に掴ませ持ち上げる。」などの稽古。先生が帰られた後、膝行の稽古をしていて気が付くとトレパンの膝のあたりに血が付いていた。いつの間にか擦りむいていたようだ。先生からは初日の稽古が長すぎるから、ゆっくりとやりましょうとのメールがあった。自分でもそう思った。

4月×日 第3日

合気道の基本の構え、「歩行」、「上げ手」など教わるが、ただ、先生の動きをまねて、体を動かすので精一杯。『全部覚える必要はない』と言われるが、目の前で先生の動きを見ていてもすぐ忘れる。情けない。冗談など言いそうもない先生が稽古中に、学生にだじゃれを言った。謹厳実直な先生と思っていたので意外。

5月×日 第4日

稽古をしていても、どう動けばよいか分からない。ただ、先生の動きを真似ているだけ。二〜三ヶ月は稽古しないと、と始める前に予想していたことだが、物忘れが酷いのか、物覚えが悪いのか。予想以上に付いていけない。でもつまらなくないのである。

5月×日 第5日

「歩行−合気道の歩き方(正中線の育成・半身の一致)」。足の運び、手の構えがバラバラで、足を気にすれば手が、手を気にすると足が…、となり何度やっても覚えられない。稽古中はそうか、と思うのだが道場を出ると、スーッと忘れる。数年前まではこんなことはことはなかった。脳細胞の死滅が、他の人より2倍くらい早いのではないかと思う。覚えたのは「膝行」「一文字腰」くらいである。

5月×日 第6日

「転換」・「入り身」など言葉は覚えたが、足の運びが分からない。分からない、覚えられないばかりだ。「膝行」で膝を擦りむく。次回からサポーターを付けよう。

5月×日 第7日

「手解き」という技がある。何回か前から教わっているが、手首を掴まれたときの外し技である。この技など、いかにも武道という感じで、できれば面白いと思う。だが、先生に掴まれると、まるで外れない。何とか外そうと、力でグイグイやるから、手首は痛くなるし、痣はできる。ところが、先生の手首を強く握っても、スルリと外されてしまう。稽古を続ければできるようになるのだろうか。

注文してあった道衣ができたので、早速着てみる。ダブダブだが武道をやっているという気持ちになる。洗えばどんどん縮んで、風合いがでるようになるとのこと。稽古を重ねて身に付くようにしたい。

6月×日 第9日

基本的な構え「一文字浮身腰・一文字撞木足(レの字に立つ)」。足の運び「しゅもくあし撞木足・なみあし常足」が、少しできるようになった。手と足の動きがかみ合うようになってきた。自宅でも練習。ホッとする。とにかく覚えるまでに時間がかかる。

6月×日 第9日

今日は先生と二人での稽古。1時間みっちりと稽古をすると、手加減されていても息が上がるし、緊張の連続で疲れる。先生からは楽しんで稽古をしているか、と聞かれるがまだそこまでの余裕はない。先週、「歩行」がやっとできるようになったと書いたが、先生の前でやってみると、手の動きが違うと言われた。残念。

6月×日 第10日

最下級の9級の技を覚えるように、とのことでテキスト「意心形心」を確認しながら稽古をする。しかし体の動きと技の名称が結びつかない。ほんとに情けない!。「膝行」は何とかできるようになる。今日は「膝行の後下がり(後退動作)」。やってみるが、足がつかえて下がれない。先生から宿題だと言われる。この動きなら自宅でもできるし、時間をかければ何とかなりそう。基本の構えである「右半身」「左半身」「歩行」など、まだぎこちないが半年経てば何とかなると思います、と先生に答える。「上げ手」は上手くなったと誉められる。

6月×日 11日目

さて、「膝行の後下がり」である。日常生活で後に歩くことはしてないのだから、難しいのは当然。足の送りは単純に前進の反対をやればよいのだろうと、四日間ほど練習したが前進の反対が簡単ではない。下がるときの足が思うように動かない。モタモタしながら、ゆっくり後へ下がれるようになった程度である。先生からは『正中線が直線に移動するように工夫する』と言われる。9級の技の稽古を繰り返す。4〜5回目ごろよりか少し覚えたかな、と言った感じである。

7月×日 12日目

9級の基本技の稽古をする。座り技「片手取り・上げ手」は右手は少しできるようになったような気がするが、左手はまだ力まかせで、腕、肩に力が入ってしまう。この「上げ手」という技は不思議である。腕に力を入れると上がらないのに、力を抜いた時は上がるようだ(自分ではまだ解らない)。今日から女性が入門。先生から『膝行を教えてあげなさい』と言われる。まだ入門3か月なのに。『そうすることで、自分のできないところが判るのですよ』とのこと。確かにそうだ。

7月×日 13日目

「手解き・上げ手」などほとんどできない。3か月も経つのに上達しません、と言うと、先生は『初心者と稽古すると、成果が上がっているのが判る』。本当にそうかな、道場以外では試してないし、自分では納得できるものがないのだ。『「上げ手」は膝・股関節・肘・胸を柔らかく、正中線と半身を相手と一致させる』こと。

7月×日 14日目

昨日は東京で39度だとか!。『質問は?』とのことなので「船漕ぎ」を教えていただく。『押すとき、引くとき肘を左右に張らない。直線動作・全ての運動を足腰の緩みの中で行う』ことが大事とのこと。

しかし、実際には腕の力で押し、引きしているだけで、足腰のことまで頭が回らない。

「上げ手」に関しては楽心館のホームページにリンクされている「日本伝合気柔術−金沢八景支部」の「玉磨き」「上げ手」など、上げ手に関する解説書を読み、自分なりに試してみたが、だめである。先生のお話では『個人差があり、結局は稽古を積み重ね』、と言うことであろう。今日の成果は『姿勢が大切であり、崩れていると技が掛からない』ことである。

7月×日 15日目

中野体育館道場が休みでしばらくは文京道場で稽古。「上げ手」の稽古で相手の人が、『自分の髪の毛を抜くつもりで手を上げる』と言ったのは面白かった。

9月×日 17日目

「突き」の対処の仕方を教わる。相手が拳で突いてきたとき、避けるのではなく、「直に入る」ことが大事で、『先を取ることをしっかり体得する』ということ。だが、これは難しい。恐怖感もあるし、これが出来るようになると、武道が出来るということになるのだろうか。

9月×日(土) 18日目

前転の受け身、「膝行」の復習稽古。前転は連続して回転すると目眩がするが、初めのころと違って何とか続けられる。「膝行」は『中心線をずらさない、膝と肩をねじらず、一緒に動かす』のが必要と言われる。たしかに畳の線に添って動いてみると左右にぶれる。それでも以前と比べると滑らかにできるようになった。ただ、まだ後退がぎこちない。その後で、「座り技・一教」を教わる。五種類あったと思うが、何とか二つは覚えた。自宅でもやってみたが動きだけは覚えていた。この点が今までと違うところで、最近は稽古の動きが多少分かるようになったのだ。先生に9月からは土曜日も参加したい、申し込む。合気道が面白くなってきたのである。

9月×日 20日目

今日から中野体育館で稽古再開。これは高度の技術として、「相手の両手を持ち両肩を開くようにしながら下に落として崩す(両膝ががくっと崩れる)」技を教わる。もちろん自分では出来ないが、こういう技は好きである。今後は、覚えた技を忘れないためと、確認するため文章化することにした。

9月×日 21日目

「上げ手」は上手くなったから他の人に試してみたらと言われる。そう誰かに試してみたい!。

9月×日 26日目

先週の日曜日、大正大学合気道同好会主催の「伝統武道と合気道」の演武会を見学に行った。居合道、空手道、大東流・大韓合気道、等々の団体の参加。動きの派手な、プロレス的な格闘技といった武道もあった。

10月×日 27日目

一日入門の人が参加。その人と「手解き−合気の手に入る前の基本」の稽古をする。ところが相手の人は全然できない。それに比べ私の「手解き」はよく決まった。調子に乗って「下げ手」も掛けてみたらこれも決まる。もちろん始めてである。『すごいですね!』などと言われる。この人は大東流と合気道を3年ほど稽古しているとのことだったが、「こんな技は始めての体験で、他の道場でも経験したことがなく、すごいすごい」の連発であった。

さて家に帰って考えてみたが、あの人は、ひょとしてわざと技に掛かった振りをしたのかな、とも思った。そのまえの若い人との稽古ではそれほどでもなかったし、それに、何年も稽古をしている人に、入門して半年程度で技が掛かるのかな、と疑問に思う。

10月×日 28日目

中野駅前に一週間期限の無料掲示板があり、合気道楽心館のステッカーを作成して掲示する。反応を期待。石川先生に先日の一日入門者のことを話すと、『稽古活動は、目的を持った方向性の元に作られる環境。その環境が異なると、同じ名称の武道でも、そうした現象が起きるものです』とのこと。さて稽古は、相手が拳で打ってきたときの対応。半身になり、片手で受け片手は相手に肘を押さえ、足はレの字(撞木足)にする。何度か繰り返したが、これは手が痛い。慣れれば大丈夫とのこと。護身術として身につけたい。

10月×日 29日目

「手解き」を太極拳の仲間に試したところ、まあまあ技が掛かった。その際、右手を出して掴ませたところ、相手が交差して右手で掴んできた。女性だったためか何とかできたが、この交差して掴まれたときの対応を先生にお聞きしたところ、早速教えていただく。この「片手交差取り」は9級の技だそうで、私にはまだまだ難しいが、こうして、一歩一歩、合気道の技を身につけていくのだ。

10月×日 31日目

「手解き」の稽古のとき、掴まれた手を上げ始める瞬間、私の手首を掴んだ腕を引き気味にする人がいる。本来、攻撃的に押さえた手を引くというのは無いと思うのだが。「下げ手」でも同じように引いてしまう。相手はそうすることで、技を掛からなくしていると思っているようだ。引かれ時は、そのまま相手を押したり、突いたりするのだろうか。どう対応すればよいのか分からない。

10月×日 32日目

今日は先生と二人だけなので、たっぷりの稽古。特に「手解き」をお願いする。体の使い方を深めることができると思うからである。しっかりと握られた手首をどう解くか。これは手首を掴まれて見れば分かることだが、力の弱い人からでも、しっかり掴まれると、手が解けないことが分かる。私の場合、利き手が右だから、相手が普通の女性なら力で解けるが、男だと難しくなる。とくに、石川先生に掴まれるとまるでダメだ。ダメを無理して解こうとするから痣ができる。ゆるめに掴んでもらうと右手は解けるが、それでも左手は解けない。しかし、力を使わない技であるからには両手ができなければならない筈で、ということは、右手は力とスピードで解いているということになる。先生からは解き方のヒントを教えていただく。

「手解き」等の稽古のあり方について、先生からは、『何を養うかを見失った、頑張りあいをしないように』と言われた。

10月×日 33日目

石川先生はときどき、洒落を言う。私は、武術家というのはいつも難しい、厳しい顔をしていて、洒落などもってのほか、などと思っていたので当初は意外であった。それに、先生は男前だからなおさらである。まあ「男前」といっても、今時の若い人は分からないだろうが。中野体育館道場は参加者が中高年なので、雰囲気を和らげるため気配りされていると思うが、私にとっては楽しく合気道の稽古を続けるためにも、ありがたいことである。

11月×日 35日目

来月9級の審査をするから、と先生に言われるが「よし出来る」と言う実感がない。早速テキストに添って9級の稽古を始めたが、それぞれの技の、体の捌き、足の運びなどがあいまいで、体に身に付いていない。「手解き」も相変わらずできない。

ステッカーは貼っているけど今のところ反応無し。

11月×日 36日目

稽古終了30分前ぐらいになると、個別の練習(それぞれの技量にあった)になることがある。若い人との稽古のとき、相手の技が掛からないことがあった。すると、掛かった状態になってほしいと言われた。こんな時は、そのまま言われたようにするのが正しいのか、それとも、技の種類によってなのか?。

11月17日 37日目

12月の審査に向け9級の稽古をする。先生から『手解きは、合気道楽心館の他の支部と比べても、かなりの実力になっている』と誉められる。誉められるとやっぱり嬉しいものだ。

11月×日  38日目

さて審査である。動きも堅く、型もあやふやで、次はこれ、その次は…、とただ順序を追っているだけで終わった。『緊張していた』と受けをしたIさんに言われたけど、まったくその通りで、これが文京道場なら大勢いるから、もっと緊張したと思う。合格とはなったが、自分では不合格である。先生も私のできが悪いためか、審査の評も言いようがな無かったのではないか。そんな気がする。

12月×日  45日目

中野では今年最後の稽古日。9級の復習をする。うろ覚えもあり、動きも悪く、もたもたして、9ヶ月も稽古しているのに、自分でも情けなかった。休まず通い、稽古もまじめにしているつもりなのだが。同じ世代がいないから比較できないが、自分はどの程度なんだろう。先生からは『後一年ぐらいやるとかなり上手くなる』と言われる。ウーン、そう言われると、すこし希望がでてくるかな。

12月×日  46日目

文京道場の最終日。「手解き」は、まあまあできるが、その他はだめだ。上手くなるには稽古しかない。と思う。

2005年