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合気道と倒すメカニズム

はじめに

私達は普段意識することなく立ったり、歩いたり、走ったりしているが、時には石に躓いて意識せず転ぶこともある。また、ある時は体操等で意識して倒れることもある。意識する、しないに関係なく望ましい状態であれば立つ、歩く、走る、倒れる等は「制御されたもの」であり、望ましくない転ぶ等は「制御されていないもの」と言える。では、私達が合気道の技を掛けたことにより相手を倒し、相手が転ぶ。このことは、どの様なメカニズムによるのでしょうか? テーマが人間の基本動作そのものであり理解し難いので立つ、歩く、走るを人間の動きを真似て作られた動歩行※可能な二足歩行ロボット(以下ロボット)の制御から逆にそのメカニズムを学んでみましょう。

※人間と同様、力の作用点が常に足の裏になくても歩行可能な制御であり、鉄腕アトムやアラレちゃんのそれです。足の裏に必要な歩行を静歩行と言います。静歩行は、胸から火花を散らし、体を傾け片足に自重を掛けながら歩く昔懐かしブリキのオモチャロボットの歩行です。イメージ出来ない人は、お父さんに聞いてみよう。

ロボットの制御法

人間は、立ったり歩いたりしているとき転びそうになると、足裏の一部に力を入れて踏ん張ったり、耐え切れなくなると、体の一部(膝や腕、上体等)を動かしたり、時には足を踏み出すことで安定を図ろうとします。

では、ロボットはどの様に制御されているのでしょうか。

制御された状態で、一番理解し易いのは立っている状態です。この時、ロボットの両足裏を含む包絡線の内側にロボットの自重による重心線が通っています。しかし、この包絡面内のどこに重心線が有っても良い訳ではなく制御可能範囲が存在し、この範囲内にずれ量を抑えるように制御されています。次に理想的に歩いている時、ロボットの足裏には、床からの反力が作用する床反力中心点(以下A点)が有り、一方、ロボットの重心には、先程の自重による重力以外にロボットの移動により慣性力が作用し、これらふたつの力の合力の作用線と地面との交点(以下B点)が存在します。ロボットの歩行は、このA点とB点との距離が一致するよう制御されると同時に、この動きを連続的に行う様目標歩行パターンをコンピュータ(以下CPU)の動きを追従させることで可能としているのです。ここで、肝心の点は、足首に備えられた各種センサーにより検出されにCPUに送られています。

躓いてバランスを崩したとき、ロボットには転倒力(人間が躓いたときのオットットとなる力)が発生し重心に作用します。この転倒力が加わることで、目標B点とA点とのずれが大きくなり制御範囲を超えると転んでしまいます。これを防止するため、積極的にA点とB点のずれを小さくするよう制御をかけます。例えば前に倒れそうな場合は、目標歩行パターンより前方に加速させることで目標 B点がA点より後方へ移動することとなり、姿勢の安定を図ることが出来るのです。この制御は、私達が稽古で後方に倒れたとき、倒れる方向に積極的に腕を大きく振り出すことで体の落下を制御する動きと似ています。ただし、A点は前述の足裏包絡面の範囲から越えることはできないので姿勢の復元には限界があり、大きく傾くとロボットは転倒に至ります。

倒すとは「制御されていない状況を作り出すこと」

以上、ロボットの立つ、歩く、倒れるの制御を簡単に学んできましたが、認識できたのは人間もロボットも共に「制御されている」です。よって人を倒す、転ばすことは「制御されていない」状況を作りだすことに他ならないのです。そのためには、

(1)制御する時間を与えない

瞬時に大きな転倒力を与えることで、足の裏で感じるA点と耳で感じる?B点とに復元限界を越えた大きなずれを作り出すこと。これは相撲の立会のようなもので、これを行うためには力士のような稽古と体型が必要と思われ、スマートを志す私達の趣とは異なります。

(2)制御を遅らせる

相手に与える転倒力が小さくても制御を遅らせることができれば、ほんの少しのずれ量で安定した状態から不安定な状態への移行が可能と思われます。ここで肝要なのは、そのずれを相手に感知されずに行うであり、皮膚や耳が感知し、脳が制御指令を出す前に足裏の制御可能範囲から A点が動き始めることで踵が浮き始め、その結果、さらに制御可能範囲が狭められ、遂にはA点が出てしまうこととなる。ここでは等速度、等加速度運動が有効であると思われる。二人で稽古している状態をイメージしてみましょう。しっかり立っている相手に対して等速度の動きは反応遅れを発生させる。また、等加速度運動の転倒力により僅かに傾くが、空間識失調的状態により傾きを認識出来ずにいる。これは、共に人間に備わった助長性の逆利用に他ならない。そして気付いたときは踵が浮いている。この復元の範囲を越えた状態に至って最早安定とは言い難く、技の掛け放題であり倒れる、転ぶは目前となる。

この世界に近づくべく日々(失言。週に一度)稽古していますが、ロボットの進歩が秒針分歩であるのに比べ、私のそれは日進月歩どころか月進年歩、蝸牛の如き歩みです。今回も一言、精進しまーす。


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